バルセロナでの最初の食事は、店の雰囲気に引き込まれた教会の裏手にある小さなレストラン。25席くらいしかないどちらかといえばバルっぽい店内は、暗めのステンドグラスと照明がうまくシンクロした、いかにもカタルーニャの風を感じさせてくれる。
スペインに着いたら、まずガスパチョと決めていた。なぜなのかはわからないが以前どこかで口に入れたものが忘れられずに記憶のどこかに留まっていたのかもしれない。本来ガスパチョはスペイン南部のアンダルシア地方のものと聞くが、多少地方は変わってもそこのメニューにあるのであればそれでよい。娘にメニューを見てもらうとたしかにガスパチョとカタルーニャ語、そしてスペイン語で書かれている。あと我々に判別のついたのがトマトという文字だけではあったがとりあえず注文してみた。
しばらくすると娘のオーダーしたイベリコ豚の生ハムとともにサラダ、そして何とも形容し難い容器に入れられたスープが目の前に置かれる。色は大好きなオレンジに白を混ぜたやつ。トマトソースに生クリームを加えてかき混ぜたらおおよそそのような色になる。グリーンの水泡がその中心にいくつか浮いている。これはオリーブオイル垂らしたものだとすぐわかった。スプーンですくって口に運ぶと、かすかにバジルを感じるもあとは何だろう。馴染みある香りなのにわからない。こちらにやってきた店主に娘が尋ねたら、なんとスイカのエキスが合わさっていたらしい。トマトとスイカとバジルのガスパチョ、なんとも素敵な、ほら、ここはもうバルセロナかと雰囲気に酔ってしまっている。もちろんそれ以外のものも食べてはいるのだけれどあとのことはまったく覚えていない。それくらいガスパチョに充たされてしまったのである
。
席を立ったらすでに2時半を回っていたので、ホテルには戻らずにそのままガウディに向かう。可能な限り歩こう、というのが娘の提案であり、食べるのだったら動かなくっちゃね、という言葉に軽はずみにも頷いたりしたものだから後には引けず、地下鉄で5駅くらいだったら歩く方向に持って行かれてしまう。
サグラダ・ファミリアの尖塔が見えてきたのが歩きはじめておよそ30分が過ぎた頃だったことを考えれば僅か3キロしか前に進んでいないことになる。まだかなり暑い季節だったので日陰を探しさがし足を運んでいったら、突然現れた目の前のガウディに汗も疲れも吹っ飛んでいったのをいまも憶えている。
そう、いくつもある尖塔の上の方に工事のためのクレーンがぶら下がっているのは残念でならないが、いまも尚建設中であるということを考えたら致し方ない。前にある公園のベンチに腰を下ろして、青空と雲を支えるなんとも奇抜な教会を飽きることなく眺めていた。
堂満尚樹(音楽ライター)
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